水熱合成法によるPZT薄膜の成膜

キーワード: 圧電体, PZT, 薄膜, 水熱合成法


圧電体であるチタン酸ジルコン酸鉛 (通称PZT)薄膜の水熱合成法[1]による成膜を研究している。 この方法では、他の成膜法に比べ、曲面や複雑な形状のチタン材表面に成膜が可能であること、分極処理が必要ないこと、10µm程度と比較的厚い薄膜が容易に得られること、薄膜の基板(チタン)との結合が強いことなどの特徴がある。 このため、マイクロマシンやMEMSといったマイクロスケールのアクチュエータやセンサの製作に有効であると考えられる。

成膜はPb2+, Zr4+、Ti4+のイオンを含んだ水溶液中で行われる。 この水溶液、およびチタン基板を圧力容器中に入れ、高温高圧の条件におくことによってPZT薄膜を得ることができる。 PZT薄膜中のZr : Tiの比は水溶液中のイオン濃度の比によって制御することができる。

Principle of hydrothermal method Principle of hydrothermal method

当研究室では単一プロセス水熱合成法[2]を開発した。 既存の方法では二段階の異なる条件のプロセスが必要であった。 同じ条件で二回成膜を繰り返すことにより厚さ10µnmのPZT薄膜を得ることができる。

SEM photograph

この方法によって成膜されたPZTの圧電定数d31は-24 pC/Nであった。 この値はバルク材(Zr:Ti = 52:48, d31 = -93.5 pC/N [3])での値の4分の1強である。 同様に圧電定数e31は、0.3 C/m2である。 これはバルク材 (e31 = -3.06 C/m2 [3])の10分の1に過ぎず、d31と比較しても小さすぎる。

当研究室では、この水熱合成法によるPZT薄膜を用いて、マイクロ超音波モータ形状測定用の振動形プローブセンサ補聴器用イヤホンの試作を行っている。


参考文献

[1] K.Shimomura, T.Tsurumi, Y.Ohba and M.Daimon: "Preparation of lead zirconate titanate thin film by hydrothermal method", Jpn. J. Appl. Phys, Vol.30, No.9B, pp.2174-2177, 1991.

[2] T.Morita, T.Kanda, M.Kurosawa, and T.Higuchi: "Single process to deposit lead zirconate titanate (PZT) thin film by a hydrothermal method", Jpn. J. Appl. Phys., Vol.36, No.5B, pp.2998-2999, 1997.

[3] B.Jaffe, W.R.Cook, and H.Jaffe: "Piezoelectric Ceramics", Academic Press, London, 1971.


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Higuchi Lab.